Story
スーパーニャンガンロンパ2
人類史上最大最悪の絶望的事件。
超高校級の茶道部であった冬月 五十鈴は、絶望に堕ちた人々の襲撃から逃げまどいながら生家に辿り着くが、
そこは既に死屍累々となっており、その中には、かつて相続問題の中自分を救ってくれた祖母の姿もあった。
生まれながらに才能がなく出来損ないで、冬月家の後継ぎにもなれずに家の人間から見捨てられ、更には心の支えまで失った。
一族が滅び、失敗作の自分だけが生き残った自責の念と、身寄りも帰る家も失った絶望から自殺を図ろうとする冬月。
だが、そのすんでの所で声をかけてきた人物がいた。
————猫目カッツェになりすました元・超高校級の変装家、辛 零だ。
自殺の理由を問う”彼女”にぽつりぽつりと身の上を話し、最後に「ただ愛して欲しかっただけだったのに」と口を零す。
全てを知っていた上で、全てを聞き終えた化け狐は言った。
「それなら絶望という名の愛を与える側にまわればいい。愛が欲しいなら、まず与えなければ」と。
巧妙な話術は壊れかけた冬月の心を突き動かすには十分すぎるものであり、皮肉にもそれで自殺を思い止まった彼女は、
”カッツェ”の計画「コロシアイお試しフェア」に賛同。黒幕として、加担することを決意した。
……それが”カッツェ”にとって、ただの「黒幕役」であり、絶望を広げる為だけの、ただの「駒」に過ぎないということも知らずに。
同時期。
予備学科生達は混乱と恐怖の渦に飲まれていた。
才能がない自分達が命乞いをしても誰も助けてくれない。一体どこへ逃げればいいのか。一体どうすればいいのか、と。
その中でも、とある特殊な生徒達の元へ、ある情報が飛び込んでくる。
「人類と希望の味方、未来機関の××支部にて、希望ヶ峰学園生徒の保護を行います」といった内容であった。
そこへ行けば助けてもらえる。でも予備学科の自分達は……。
そうか、思い込めばいいのだ。「自分には才能がある」と、そう思い込んで、そう主張して、本科の人間になればいいのだ。
極限状態による自己洗脳の末に、藁にも縋る思いで未来機関へ辿り着く一同であったが、それすらも仕組まれた罠であった。
集められた予備学科生の正体は「予備プロジェクト」と呼ばれる、95期生のコロシアイを受けて学園が発足させた計画の対象者であり、
予備学科のうち最も才能が開花する可能性に長けているとして、秘かに監視下に置かれており、その監視網を利用されたのだ。
そんなこともつゆ知らず、現実を仮想空間と混同させるために用意されたカプセルの中に冬月と予備学科生がその身を横たえる。
それが、始まりだった。
第一の絶望は享楽。
退屈しのぎと興味心、それと少しの偽りによって、儚き少女はその短い生涯を終えた。
事件を紡いだ彼の思惑通り、一度は希望が破れ、見せしめによって3人が消えたが、犠牲の上に最後には競り勝った。
第二の絶望は嫉妬。
自身の本性を知られたくなかった女は、そも言葉を紡げない女から秘密を守ろうとする。
しかし、言葉は紡げなかったが、危機感を感じ取った体が言葉を紡ぎだした。
かがみよかがみ かがみさん このよでいちばん みにくいのは だあれ?
第三の絶望は裏切り。
案内人を裏切って腕輪を付け替えた者たちは、他の者よりも早く、絶望という名の毒が進行していき、4人は絶望の暗示に身を任せて自ら命を絶つ。
が、ただ一人、九尾の女狐だけはそれに抗い、衝動を抑えるために衝動に従って通りすがりの少年を刺し殺した。
第四の絶望もまた、欲と毒であった。
徐々に毒に侵されていた少年は、自分を食べてもらいたいという衝動を抑えられなくなり、
また、代理人は、誰かの願いを叶えたいという欲望を抑えられなくなった。
それを見てしまった画家の少年は、化け狐の甘言に乗り、もっと死体が見たいが為に代理人を殺した。
結局人間は毒には抗えない生き物なのだろうか。
第五の絶望はエゴ。
コロシアイが終わるまで永遠に効果が継続する薬で、これ以上親しい仲間が、恋心を抱き始めていた彼女を失いたくないと、
再三にわたって猫たちに止められていたというのに、遂に心理に強い彼は行動に出る。
コロシアイを止めるために自ら犠牲になったが、皮肉にも、彼女————黒幕の心を強く揺さぶることになったのであった。
最後の絶望は愛。
ここが電子空間であり、死者は生き返ると信じていた冬月は、皆を救うため、改めて黒幕を「演じ」、とうとうその正体を明かす。
結局のところ、現実世界であることと、全員が全員助かるわけではないことがわかったが、それでも尚、黒幕を演じた。
だが時すでに遅し。
希望に感化された駒は不要だと、化け狐はあっさり彼女を見捨て、そして姿を消した。
「……なんで、なんでまだ、優しくしてくれるんですか……私なんか、に……」
絶望の槍で貫かれながらも、最後に感謝の言葉を述べた彼女は、静かに友人たちを見送った。
死地に向かう友人たちを、ただただ静かに見送った。
その後の話が二つほどある。
一つは死んだはずの95期生や予備学科生を含む生徒たちが、突然全国的に爆破テロを起こした1225事件。
もう一つは、第二のコロシアイの開催である。
そもそも今回の一連の事件は、本科の生徒と予備学科でコロシアイをさせる為の選考実験であった。
確かに先のコロシアイの黒幕は冬月であったが、彼女は中盤以降、友人に絆されて希望へと転身しかけており、それは辛にとって不都合だったのだ。
早々に彼女を切り捨て、さてどうしたものかと悩んでいたその時、運命的な出会いをする。
コロシアイによって深く絶望に惹かれて絶望堕ちした新聞部候補生、いや、“名無し”の少年のことである。
自分に異常なまでの信仰心と服従心を見せた彼に感心し、辛は相方である守屋 弥勒に相談。
彼を第二のコロシアイの黒幕に仕立て上げることにしたのだ。
そうしてまんまと騙されて閉鎖空間から脱出してきた予備学科と、同じように脱出してきた本科の生徒たちを鉢合わせさせ、全ての記憶を消した。
絶望はまだまだ続くらしい。
きっかけは3つの絶望と3人の愉悦だった。
ニャンガンロンパ
希望ヶ峰学園95期生、古小路 直加は様々なものに押し潰されていた。
陰湿な影口と、同じだけ圧し掛かってくる周りからの期待、本家と分家の因縁渦巻く古小路家の決まり事、
そして何よりも、大切な彼と交わした、“笑顔にしなくてはいけない”という遠い日の約束に。
やがて彼女は、人間が究極に追い詰められた時に零れる笑顔こそが、心からの笑顔という思考に囚われる。
当時、雑誌取材で一緒になり、仲良くなっていた猫目カッツェとクラスメイトになった事をきっかけに、
共に絶望していたよしみで、愉悦部を設立。
いつしか絶望的なコロシアイ学園生活を計画するようになっていった。
そんな時だったのだ、実際にやればいいじゃないかという、化け狐の声を聞いたのは。
96期生 辛 零に唆される様にクラスメイト達を絶望に染め上げ、彼女達は遂に計画を実行する。
後に彼女らを含め、超高校級の絶望と呼ばれることになる他の生徒達が起こした暴動に便乗し、
学園から逃げてきた生徒を演じて、シェルター化しようとしていた他校を侵略。
そうして全ての舞台を整えた上で、カッツェがクラスメイト達の記憶を催眠術で封じ、
学園長役を引き受けた彼女の代わりにサポート役として辛が潜入する。
これで絶望の学園生活は幕を開けたのであった。
最初の絶望は暗闇から生まれた。
少女は2つの暗闇に怯え、探究心の化け物を突き飛ばし、最期は流星の槍に貫かれる事になる。
時を同じくして、絶望の化身にその身を八つ裂きにされた霊能師を含め、3人が消えた。
2番目の絶望は独占欲と3つの毒から生まれた。
1人の少女は、残してきた少年を想いながらその毒に犯され、絶望の調べを紡ぐ。
1人の少女は、知らないうちに侵食していた毒をもって毒を制し、裁きをくだす。
1人の少年は、奪われた友と毒に揺れ動きながらも後者を選び、友の手で素敵なディナーを作り上げた。
その毒の名は、××。
3番目の絶望は嫉妬から生まれた。
天才によって堕とされた天才は、友の記憶に残るために、痛みを知らない少女に狙いをつける。
結果的に、利用した不運と、件の天才に、己の罪に狙いをつけられたのは、幸か不幸か。
4番目の絶望は渇望から生まれた。
封じられた記憶の一部が剥がれ、それと同時に、自身の化けの皮も剥がれていく。
そうして6つの絶望は、新たな絶望の火種を生み出す。
ある者達は更なる絶望を求め、ある者は幸せを求め、またある者は美しい悲鳴を渇望した。
残された絶望の薪と、後に灰となった薪に、違いなどなかったのだ。
5番目の絶望は計略から生まれた。
ただ一人、“最初から”絶望に染まっていなかった少年は、黒幕を暴く為、孤独な戦いを挑まんとした。
無論、愉悦達が見逃すはずもなく、彼を潰す為に、勝利が既に約束された圧倒的な戦いを挑んでいった。
愚かな少年は大きな壁の前に倒れたが、そこに大きな穴を遺したのであった。
最後の絶望は希望を生んだ。
長い戦いの果てに黒幕を見つけ出すが、逆に彼女に再び絶望に落とされそうになってしまう。
だが落ちなかった。
絶望の薪と、彼の親友という火種が希望という炎を灯し、暗闇に潜んでいた元凶まで照らしたからだ。
「もういいや!ふふふふふふふふふっ!!!あはははははははっ!!!!」
希望の弾丸で撃ち抜かれながらも、その笑顔を忘れなかった古小路は、そのまま親友と共に地に落ちた。
作られた舞台は崩れ、眩しい光が生き残った生徒達を照らしつけた。
滞在を犯した自分達を世界が拒もうとも、前へ歩き続ける。
そう決意して、彼らは絶望の城を後にした。
「いや、まだおわんないよね?」
「正直まだ絶望を振りまけてないよね。全国放送してたって、まだまだ足りないよね?」
「でしょう? カッツェ先輩」